相続不動産、売るのか貸すのか
先般、お客様からこんなご相談がありました。
高齢の父が施設に入ることになり、父が所有していたマンションを売った方がいいのか、貸した方がいいのか、とりあえず持っていた方がいいのかわからないのでアドバイスがほしい。
この場合はお父様がご存命の状況ですので、相続案件ではありませんが、相続対策を踏まえた内容になってきます。
ちなみにお父様が相談していた税理士さんからは、絶対に賃貸に出した方がいいとお勧めされたとのこと。
理由は、ご生前に売却して現金化してしまうと相続税が増えるから。
税理士さんの仰ることは相続税の観点から言えばご最もなこと。
一方で、賃貸に出すには築25年程経っているお部屋で故障している器具がすでにあること、これから故障していく設備等も推測される点から、事前に数百万円かけてリフォームをかけるべき状況であること等、一概に賃貸一択ではないと思いました。
また、お父様が購入された時から地価が高騰し、譲渡益が3000万円くらいは出てしまうため、お父様が退去された日から3年目の年末までに売ることによって、譲渡所得税の大きな軽減も受けられるという状況でした。
正確な資産状況は分かりませんでしたが、たたき台として不動産以外の資産を仮で概ねの金額で設定して、売却した場合と保有し続けて相続が発生した場合で予測される所得税と相続税の総額を算出してみました。
結果、保有し続けた場合と今売った場合で差額は数十万円程度となり、保有資産額が1千万円多いか少ないでどちらが損か得か入れ替わるような状況でした。
ご相談者さんは賃貸に出すためのリフォーム資金捻出に不安があり、ご家族で再度検討という形になりました。
この事案は、相続税を軸に考えれば生前には不動産は売らずに不動産として保有しておく、という事も他の視点から見れば決してそうとも限らない。ということを改めて教えてくれるものでした。ちなみに令和5年にマンションの評価乖離率算定というものが入り、高層マンションが時価と相続税評価に乖離率があったものも見直され、この事案も14階建ての12階のお部屋だったため、評価額が約1.7倍程上がってしまったのですがそれでも時価よりははるかに低い金額で算出されました。
要は税金の損得を軸で考えるのではなく、お金の出入りがいつあると望ましいのか、ということもしっかり考える必要があるのだと思います。
特に不動産をお持ちの方は多いと思いますが、それをどうするべきなのかわからないという方がほとんどだと思います。
私も少しでもお役立てできれば幸いです。